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医学部受験のプロのアドバイス「『地域医療』について考える」(前半)

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医学部受験のプロが、これまでの経験や知見をもとにアドバイス

「地域医療」は、医学部入試の小論文や面接で毎年のように出題されている頻出テーマの1つです。
2020年度久留米大学医学部の推薦入試の小論文試験では、「理想の地域医療実現に必要なこと」について800字(試験時間 60分・配点 50点)で記述する問題が出題されました。

また、2020年度入試から、地域枠の募集人員は一般枠の募集人員とは「別枠」で募集することが厚生労働省より義務付けられました。そのため、地域医療に対する知識をより一層深めておくことは、大いに役立つでしょう。

今回、神戸大学医学部医学科卒業後、現在は医師として活躍されているH・Yさんにご協力を頂いて、「地域医療」の小論文対策を4つの論点から整理してみることにします!

まずは「地域医療」を4つの論点で考える

まず「地域医療」をテーマにした小論文は、次の4つの論点から構成されます。

  1. 地域医療の「定義」
  2. 地域医療に求められる「医師像」
  3. 地域医療の「問題点」
  4. 地域医療で提起される問題に対する「解決策」

多くの受験生はいきなり3つめの「地域医療の問題点」から書き始めるかもしれませんが、それはあまりおすすめできません。

なぜなら地域医療の役割を明確にしないと、問題点や解決策を導き出せないからです。

極端な話をすれば「地域医療の問題点について述べよ」という問いであったとしても、字数に余裕があれば、上に書いた1つめと2つめの内容についても簡単に触れておくべきです。

このように、問題となっている言葉の定義や基本的な考えについて述べることは、他のテーマの小論文を書くときでも重要となってきますので念頭に置いておきましょう。

1.地域医療の「定義」を考えてみる

皆さんが地域医療をイメージするとき、山間部や離島などの診療所でお年寄りや子供たちと触れ合いながら楽しく治療活動をしている医師を思い浮かべるのではないでしょうか。もちろんそれも地域医療に対するイメージの1つかもしれませんが、それをそのまま答案用紙に書いたり面接で答えたりするわけにはいきません。

自治医科大学監修の地域医療テキストによると、「地域医療」とは「住民が抱える様々な健康上の不安・悩みに適切な対処を加えるとともに、住民が安心して暮らせるように配慮した支援を行う医療活動」のことをいいます。

特に後半の部分が都市医療との違いに当たりそうです。

つまり、地域医療では患者の病気が治すだけでなく住民の様々な生活支援を行うことが求められ、そのためには時に警察や消防など様々な職種との連携が重要になります。

2.地域医療に求められる「医師像」を考えてみる

地域医療を担う医師は住民の生活支援を行う、つまり住民を「身体的」だけでなく、「精神的」、「社会的」にも良好な状態にするよう努める必要があります。(ちなみにこの3つが揃った状態が「健康」であるとWHOによって定義されています。)

シンプルに言い換えるならば、「住民のQOL(Quality of life:生活の質)の向上を目指す」ことが必要である、といってもいいかもしれません。

では、それを果たすための医師とはどのような医師でしょうか?
それは、「様々な疾病に対応できる医師」、つまり「かかりつけ医になれること」です。(単に「優しい」とか「体力がある」とかでは、都市部の医師に求められるものとあまり変わりがありません・・・。)

都市医療の医師はそれぞれの専門の診療科に特化していく傾向がありますが、地域医療を担う医師は、専門性などを問題にしていては地域住民と信頼関係を築けませんし、いざという時に住民の命を守ることができません。

もちろん、住民のQOLを向上させるためには他にも様々な知識や行動力を必要としますが、都市医療の医師と比べるならこの点に注目するのがいいでしょう。

3.地域医療の「問題点」を考えてみる

地域医療の問題点としてありがちな誤解として、田舎だから施設や設備が都市部と比べて劣っているというものがあります。

実は地方の病院は意外に設備の良いところが多いのです。

むしろ問題となっているのは診療科による医師の偏在です。
これは産婦人科や小児科、救急科、麻酔科、総合診療を実施する科、救命救急センターなどの特定診療科の医師が不足しているということを指しています。

4.地域医療の問題点の「解決策」を考えてみる

地域医療の問題に対する解決策は、ある程度皆さんの工夫の見せどころになりますが、ここではいくつか紹介をしておきます。

診療科による医師の偏在が地域医療の問題点であるとすると、
「医師の数が少ない→個々の医師の負担が重い→医師が辞めていく→残った医師の負担がさらに増える」
という悪循環に陥る可能性があります。

これを解消するために必要なのが医療における人的・施設的資源の効率的投入、平たく言えば役割分担です。

人的資源でいうと医師・看護師・理学療法士作業療法士・薬剤師など多くの職種による役割分担、すなわち「チーム医療」です。

それぞれの職種が専門性を最大限に発揮することで医療の質の向上、および各職種の負担軽減が実現します。

また、施設的資源でいうなら比較的リスクや緊急性の低い疾病、出産などを扱う1次施設(診療所など)、重篤な患者を扱う3次施設(大学病院など)、1次と3次の中間にあたる2次施設の役割分担です。

これによりいざという時に3次施設の病床が確保できて、たらい回しや救急医への過度な負担を防ぐことができます。

以上、4つの論点を踏まえたうえで「地域医療」を整理してみました。
次回は、この4つの論点を踏まえて地域医療をテーマにした小論文をご紹介したいと思います。

お楽しみに!