医学部受験のプロが、これまでの経験や知見をもとにアドバイス!
前回は「地域医療」の小論文対策を4つの論点から整理してみました。
→前回の「『地域医療』について考える(前半)」はこちら
今回は、この4つの論点を踏まえて地域医療をテーマにした小論文を、神戸大学医学部医学科卒業後、現在は医師として活躍されているH・Yさんにご協力を得て作成して頂きました。
ぜひ参考にしてください!
地域医療をテーマにした小論文の例文
小論文テーマ「地域医療について」
人々の生活の質(QOL)の維持・向上を目指す医療の中でも地域医療の特徴は地域住民の健康上の悩みに対処するだけでなく、住民が安心して暮らせるように配慮した支援を行うことである。
したがって医療者は警察、消防、教育など様々な分野と連携しながら住民の生活を守っていくことになる。それを担っていく医師に求められる資質には住民一人ひとりに寄り添っていく優しさや体力に加えて、いわゆる「かかりつけ医」となれること、つまり専門としている診療科だけでなく様々な疾病や体の不調に対処できることが含まれていると考えられる。
しかし、現在の地域医療では医師の地方・診療科偏在による、救急医療や産婦人科を担う医師の不足が問題となっている。
医師が地方の病院や産婦人科などの診療科を回避することには様々な理由が考えられるが、医師不足により残った医師に大きな負担を与え、さらに医師が辞めていくという悪循環が起こっており、これを一刻も早く止めることが求められる。
そのためには少しでも多くの医師に来てもらえるようそれぞれの地方の病院や診療科の魅力を伝えていくと同時に、医師の負担を減らしていくことが必要である。
その例の1つが人および医療施設の役割分担である。人でいうと医師・看護師・理学療法士・作業療法士・薬剤師など多くの職種による役割分担、すなわち「チーム医療」である。
それぞれの職種が専門性を最大限に発揮することで医療の質の向上、および各職種の負担軽減が実現できる。
また、施設でいうなら比較的リスクや緊急性の低い疾病、出産等を扱う1次施設(診療所など)、重篤な患者を扱う3次施設(大学病院など)、1次と3次の中間にあたる2次施設による役割分担である。これによって救急医療を扱う3次病院の負担が軽減でき、病床の不足による救急患者の受け入れ拒否(いわゆるたらい回し)も防ぐことが可能になる。これから高齢化社会が進んでいくと考えられる現代において地域医療の発展は必要不可欠である。
そのためには多くの問題を解決していかなくてはならないが、それを行政に任せきりにせず一人ひとりの医師が自分に何ができるかを考え、行動していくことが求められているのだと思う。(910字)
「自分の考えを述べる」ことを意識しつつ作成してみましょう
「地域医療について」というと少し曖昧なので今回は「自分の考えを述べる」ことを意識しつつ解答を作成しました。私は1人の医師に過ぎませんから、必ずしもこの解答が正解であるとは言えませんが、参考にしてもらえたらと思います。
地域医療の問題は様々な小論文・面接対策の参考書でも扱われていますので、そちらの方もよく見ていただきたいと思います。