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医学部受験のプロからのアドバイス「現役医師による医療現場からのお便り」

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医学部受験のプロが、これまでの経験や知見をもとにアドバイス
以前6年間Medi-UP の講師として活躍し、今は大阪市立大学の小児科医として勤務しているY・Y さんから、「現場からのお便り」を頂きました。

医師として医療現場に入って、見えるものが変わった

医師という職業に対するモチベーションについてのメッセージを書いてから、少し時間が経ちました。その後医師として私が過ごしたわずかな期間に、医師について見えるものが随分変わったように思います。
前回のメッセージ「あなたはなぜ医師になりたいのですか」はこちら

その変わった気持ちと、今も変わらない気持ち、そして今まさに将来、医師を夢見る皆さんに「忘れないでほしいこと」をお伝えしたいです。

医師になる前と後で感じたこと

さて、皆さんは医師という職業にどんなイメージを持っているでしょうか。

格好良い、大変そう、勉強が難しそう、偉そうだ…。どれも間違いではなく、医師としての一面を示していると思います。私も医師になるまではそう思っていましたし、今もそう思います。

ただ、格好良いことばかりでもないのが現実です。

医師として日々過ごしていると、自分を見失うほど忙殺されている自分に気付きます。どんなに頑張ってもなかなか改善の兆しが見えない患者さんを目の前にしたり、(自分にとって)良い同僚ほどすぐ居なくなったり…。

悲しい経験を山のようにしていると、こんなことして何になるのか、などという思いに陥ることがしばしばあります。

「あなたには私の気持ちは分からない」と患者さんに言われたときには、僕はもう本当にどうしたものかと途方に暮れてしまいます。

医師は負のオーラに呑み込まれやすい職業

誤解を恐れずにいうと、医師は負のオーラに呑み込まれやすい職業と私は考えています。

例えば接客や製造などの職種は、顧客からの「需要」があって仕事が成り立っています。そしてその需要の多くは、ポジティブな動機から生まれる「需要」が多いのではないでしょうか。例えば、あの人に贈り物をしたい、便利なものが欲しい、新たな挑戦がしたいなど。

これを医師という職種に置き換えると、顧客は「患者さん」であり、「病気や怪我を治したい」ことが需要になります。基本的には、失ったものを取り戻す、マイナスからのスタートという発想なのです。

すると、良くて治ってプラス・マイナスゼロです。そういう空気を毎日のように受け止める必要があります。

因果関係は分かりませんが、一説によると初期研修医の約10%はうつ病など精神的な不調をきたし、リタイアしてしまうという話もあるそうです(そんなことないぞ!という反論は、ひとまず置いておいてくださいね)。

こんなネガティブなことばかり書いて、せっかく医師になるという希望に燃えている皆さんの気持ちを折ることになるといけませんので、ここから話を展開していきますね。

失いかけた自分の立ち位置を見つける方法

さて、自分の立ち位置を見失ったときの抜け出し方をお伝えいたします。

マイナスなことばかり…と、自分が押しつぶされそうになったときには、一度俯瞰した目線に立って、自分を取り巻く環境を見回してみましょう(と自分に言い聞かせます)。

神の目線、第三の目、とでも言いましょうか。悩んでいる、辛い、と思っている「自分がいる」と意識してみます。すると、感情や見栄、言い訳といった目先の事案にがんじがらめにされている自分に気付きます。

皆さんも次のような経験をしたことはないでしょうか。「分かっているんだけど、やめられない」というジレンマを。そういった自分の存在に気づくことができれば、少し見失いかけていた自分の立ち位置であったり、モチベーションの源が少し見えてくるかもしれません。

ちなみにこのように、今まさに自分自身を意識する方法を「マインドフルネス」といいます。

自分を見失いかける経験は、受験勉強でも医療現場でもあり得る

過酷な受験勉強にも似たところがあるかもしれません。
そして病の渦中にいる患者さんを取り巻く環境もまた、似たような状況にあったりします。

悩むこと自体は決して悪いことではなく、責めるべきことでもありません。むしろ人間として自然な気持ちだと思います。でも、よく考えたら、その人自身が何か変わったわけではありません。木を見て森を見ず、病気を見て人を見ず。その人にはその人の人生があるのです。病気を治すことも勿論大切ですが、同じくらい、その人の人生を尊重することは大切なことなのです。

だから、「あなたの気持ちは本当には分からないかもしません。少しだけでも、分かりたい気持ちがあります。」という謙虚さが必要なのかもしれません。

医師になった今でも変わらない医師としての使命

さて、長くなりました。
改めて今私にとっての医師とは何かを、一例として示しておきます。

それは、患者さんの人生に寄り添い、病の渦中という、途方もなく孤独で先の見えない道程に水先案内人として立つ人です。

私たち医師は、他の医療者よりほんの少しだけ、指導したり治療をする権利を持ちます。その分だけしっかりと責任を持ち、人に寄り添い、皆で良い方向に向かうように努力をしていくことが、命に携わるものとして忘れたくない医師としての使命であると思います。

私は今少しばかり辛い場面にも出会います。しかし、患者さんや医療者のみんなと共に、患者さんと関わり、その人の人生の一部に加わって、共に歩むことができていると感じるとき、とてもやりがいを感じます。
そのやりがいこそが、僕が医師を志した原点だから、今も仕事を深めていきたい気持ちに溢れているのだと思います。

医師を志す皆さんに忘れないでほしいこと

最後に、将来一緒に働くであろう皆さんへ。
どうか自分を大切にしてください。自分の変わらない部分を大切に出来る人は、きっと他人を大切に出来る人だと思います。

あと少しの受験勉強の、道に迷いそうな自分から少し遠ざけて俯瞰した目線に立ってみてください。自分が今するべきことが、少し見えてくるかもしれません。