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医学部入試の小論文(後編)

滋賀医科大学の小論文で求められる力とは?

昨年、12月に行われた滋賀医科大学の学校推薦型選抜の問題を一部取り上げてみましょう。

<課題文と設問を一部抜粋したもの>
 あなたの友人が誕生日プレゼントとして、赤青黄のプリペイドカードを1枚ずつ、計3枚用意してくれた。
 友人「この3枚のカードのうち、1枚だけが10万円チャージされていて残りの2枚はそれぞれ1,000円がチャージされている。私はどの色のカードが10万円なのかを知っているが、まずこの3枚の中から好きなカードを選んでほしい」
 そこであなたは無造作に赤色を選んだ。すると件の友人は「赤でいいの?ちなみに君が選ばなかった2枚のカードの内、こっちのカードは1,000円だよ。」と1,000円であるカードの内の1枚を教えてくれた。そして続けて「今ならこっちのカードに選び直しても構わないけどどうする?」と、先ほどの1,000円のカードとは別のもう1枚のカードに変更するかを尋ねてきた。
 あなたは「あ、この状況ネットで見たことがある問題と似ているな、たしか変更した方が得だったという話だったというような?」と思いつつも、赤色が好きなのでカードは変更しないことにした。
<設問1>
人の判断と意思決定及び確率に関する認識の観点から、上記文章が示唆することを論じなさい
<設問2>
医療従事者が事象の確率や可能性について説明を行う際に気を付けるべき問題点を挙げ、その問題点の具体的な解決策を記しなさい。

課題文は条件付確率の『モンティ・ホール問題』を用いていますが、この問題は「直感で正しいと思える解答と、論理的に正しい解答が異なる問題」の有名な例とされています。

※モンティ・ホール問題の詳しい解説記事はこちらをご覧ください
確率がわかる人と実はわかっていない人の決定差:スティーブン・ピンカー
(原文記事:Why You Should Always Switch: The Monty Hall Problem (Finally) Explained

課題文中で、“たしか変更した方が得だったという話だった?”とヒントもあることから、確率論については考察できた受験生も多かったかもしれません。同時に、この問題で重要であるのは、最後に“赤色が好きなのでカードは変更しないことにした”とある結果を「文章が示唆するもの」として踏まえることでしょう。

設問2の“医療従事者が事象の確率や可能性について説明を行う際に気を付けるべき問題”についてはどうでしょうか?この問題は、医療従事者と患者のコミュニケーション、さらにはインフォームド・コンセントから意思決定の共有を問う内容です。設問に答えるためには、医療従事者と患者間における『①解釈の違い』と『②パワーバランス』が抑えるべきポイントになるでしょう。

①の『解釈の違い』… 例えば「この治療が効く確率は 20%です」という説明に対して、「20%しか可能性がないならやめておこう」と考える人と、「20%も可能性があるなら試してみたい」と考える人とで意思決定につながる認識は異なります。医師が説明した内容に対して、医師が想定していた認識と患者の認識が異なるコミュニケーションエラーは、実際の医療現場でも大きな問題となっています。

②の『パワーバランス』… 言い換えれば「パターナリズム」と「患者の自己決定」のバランスのことですね。医師と患者が比較的対等な立場で、話し合いを通じて診療の目的や内容を設定する「相互参加型」が理想とされますが、話し合いには時間がかかることが問題かもしれません。その解決策の1つは総合診療医が増えることでしょう。身近に信頼のおける主治医に日ごろから患者の心理・社会的背景を知っておいてもらうことで、いざというときに気軽に相談でき意思決定も円滑に行えることが考えられます。

以上、医師と患者におけるコミュニケーションの問題は小論文のみならず面接でも頻出のテーマですので、しっかりと事前準備を行ってください!

【参考資料】
特集 医療と消費者 ―よいコミュニケーションを築くために


Medi-UP 土肥真輔